
粉引き、黒釉、りんご灰、松灰。同じ釉の中にも、さまざまな変化があって、ほんとうに多彩な今回の長谷川奈津さんの酒器。どうしてこんなにいろいろな色が出るのかと感心してメールで尋ねたら、九州での個展前の忙しい時期なのに、それはていねいに教えてくれました。
いつでも人気の長谷川さんの粉引き。今回は珍しく赤い「ひいろ」が強く出たぐい吞みがありました。これは、土をこれまでより粗いものに変えたせいで、緋色やグレーが出やすいそうです。
また、ひいろの出る粉引きと真っ白な粉引きの違いは、窯の中で置いてある場所の違い。(上の画像参照、です。)真ん中の方にあって、「火もかぶらず、空気もあたらず」というところでは、変化がおきず白く上がるそうです。
(ちなみにごめんなさい。画像の両端のぐい吞みは、すでにお嫁に行ってしまいました。)
また、これももうすでに旅立ってしまいましたが、トップページにアップしている集合写真のやわらかなグレーの粉引きもまた珍しいもの。
このグレーは、白く発色する化粧土が薄くかかったために、白くならず、素地の色が表面に出ているもので「化粧をくう」と言うそうです。さらに、これは小さな灯油窯で焼いたため.直接火が当たってより強くグレーが出ているとのこと。
同じ種類の灰釉でも色の違いが出るのは、酸化、還元などの焼き方や、灰の性質、釉薬の組成があわさってのこと。
例えば、今回、りんご灰の豆鉢の、ピンクの方は酸化と還元の間の中性焔で、青みがかった方は還元色。(ごめんなさい、これももう無くなりました。)
また、マットなものとツヤありの違いは釉薬の溶け方で、釉薬が溶ける前はざらざらなマット状、溶けて行くと次第に透明なガラス状になり、しまいには溶け落ちてしまうそうです。
それをコントロールするため、灰を調合したり、焼く温度や時間を調整したり…。
松灰は、鉄分が多くて青緑色のビードロ状になります。
鉄がとりわけ激しく吹いているのは唐津の土、手前の比較的おとなしいのは伊賀の土。
りんご灰はカルシウムが強く、そのせいか白濁しやすいそうで、今回、真っ白な片口もありました。
りんご灰の酒器いろいろ。
鉄釉も黒だったり茶だったり。
当然、作り手によっても表情が違います。
余宮さんの鉄釉徳利は、薪窯だから火にあたっている面、あたらない面、表情が違います。
手前のぐい吞みは村木さんの鉄釉。右は長谷川さん。
本当に焼きものは奥が深い。ずらりならんだ酒器たちの、小さいけれどひとつひとつがいきいきと個性を放つさまを見ていると、それをしみじみ思います。そうして、日々、飽くなき努力を続ける作家さんたちに、あらためて深く敬意を感じてしまうのです。
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