
小田原のソノベさんから、一番大きなサイズの茶筒が届きました。
もともと豆茶筒、茶筒、茶筒(ロング)と3サイズあったお茶筒だけど、小さいふたつがバランス的に可愛いし、大きいのは8400円とお値段も張ってしまうし、などなど躊躇して、ロングは仕入れそびれていたのです。でも、たくさん飲むほうじ茶なんて小さいサイズじゃ間に合わない。やっぱり「大」も必要と思い直して、遅ればせの仕入れです。
毎日使うモノだけど、いただきものの缶などで何となく間に合ってしまう茶筒。素敵なものがあればいいけど、1万円近くもすると贅沢に思えてしまいます。でも、木目の通った凛とした姿は美しく、食卓の上に出しておいても気持がいい。ずっと長く使えるし、木の色は変化して行くから使い込む楽しみもありそうです。何より、無塗装の木が湿気を吸いつつ、適度に通気もしてくれるから、お茶がいきいきと嬉しそうな気がします。
それに、長い時間をかけて育った木が、さらに乾燥などの時間と幾人もの人の手を経て、ひとつの茶筒になるまでの工程と携わる職人さんたちの愛情は、きっと値段を超える価値。と、思うのです。
少し前,伊勢丹に照井壮さんの個展を見に行ったとき、隣のコーナーで若い職人さんが秋田の樺細工のお茶筒を売っていました。何日かの催し期間に樺細工に理解を深めた照井さんに促され、目をやると、その素晴らしいこと。若い職人さんは修行中で彼の作品はまだ並んでいないけれど、工程を説明するため派遣されていたようで、師匠たちの作品を誇らしげに見せながら、樺細工が出来るまでの高度な技の数々を教えてくれました。
薄く削った美しい模様の樹皮が、一分の隙もなくぴたりとはぎ合わせられた樺細工。それは見事なものだったけれど、お値段は2万、3万、5万…。「こういう値段になってしまうから、やっぱりお茶の世界以外では難しいです」と彼は言いました。
何万もしないまでも、お茶筒を売るのは難しい。なんでですかね、と照井さんに聞かれ、う〜ん、とりあえずいただきものの缶なんかで間に合っちゃったりするからかしら。そう言うと、「それは啓蒙しなきゃダメです」と照井さん。「聞いてみたら、機能もすごいんですから」。
そうだよね。それがお店の仕事だ。
と、肝に銘じて、それでも何ヶ月か経って、やっとソノベさんの大きな茶筒を仕入れました。3種類揃ったお茶筒は、カウンターの上で幅を利かせて胸を張って、嬉しい出会いを待ってます。
ロングの茶筒

小さな茶筒は伝統工芸師の大川和美さん(お目にかかったことはないけれど、ソノベの人は「素敵なおじいちゃま」と言います)が作られているもの。ある日、PARTYに来てくれた若い漆の作家さんが、これをしげしげと見て「よくこのお値段で出せますね〜」と首をひねりました。小さいけれど、3つのパーツがぴたり合わさり、使ってさらにちょうど良くなるというこの熟練の技は、ほんとにそう思います。
旅行にお茶を持って行くときにいいわね、と言ったお客さまがいらっしゃいました。旅先でのお茶が楽しくなりそう!
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