タイマグラの暮らし。 |

雪国の長い冬に生まれた手仕事を、いつもでも受け継ぎ、より多くの使い手に伝えて行くために始まった工人祭。いまは、地元だけでなく、全国から手仕事の「工人」が集まって、賑やかで楽しい催しになっています。
そこで見つけたのが、岩手から来ていた桶正さん。そのころ毎朝のごはんのおひつが欲しくて「でも、作った人から買いたいね」などと思っていた私たちは、やった!とばかり小躍りして、いかにも職人さんらしい素朴な佇まいの桶正さんから三合のおひつをいただいて、大事に抱えて帰って来たのでした。
その桶正さんが、ちょうど同じ年、松本で出会ってお願いするようになった秋田のガラスの伊藤さんと親しいことをあとで知って驚き、つながって行く関わりが楽しくて、また持ち帰ったおひつに愛着が深まったものでした。
お店を持たない桶正さんは、全国のこうした催しを巡っていて、その後、市川の「工房からの風」や松本クラフトフェアで何度か、会うことが出来ました。
そして、奥畑さんの住む岩手の
その暮らしぶりは桶正さんの奥さんで染織家の
雪深く長い冬、つかの間のきらめきの夏。その1日1日を、自然と寄り添い、愛おしみつつ過ごすちほさんの暮らし。日々の新たな発見や体験や感動の中で育まれる、暮らしの術や生きとし生けるものへの深い理解と愛情、そして危惧。タイマグラの自然がくれるものは、発達した情報社会があたえる恩恵よりも、はるかに豊かでまやかしのないものに思えます。
でも、それはまた、厳しい自然と折り合って生きる決心をした人たちだけに与えられるご褒美なのでしょう。
使い続けた桶正さんのおひつはすっかり年季が入って隅が黒くなり、最近は時々、タガが外れるようになりました。はめ直してはまるぐらいならいいけれど、どうしても落ちるようになったら、送ってもらったら治します。と桶正さんは言ってくれました。
そうか、治してもらったら、タイマグラまで迎えに行こう。
なんて、またちょっと企んでほくそ笑んでるわたしです。



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