お燗ブーム。 |

日本酒は本来大好きで酒器はいっぱい持っているけれど、翌日に響きがちなので家で飲むことは少なかったのです。でも、ある日、あまりの寒さにお燗を付けたら「ん〜、旨い!」。それからちょっとクセになりました。
一口にお燗と言っても温度によっていろいろ呼び方があって、30℃ぐらいが日向(ひなた)燗、35℃ぐらいが人肌燗、40℃がぬる燗で、45℃が上燗、50℃が熱燗、55℃以上が飛び切り燗。というのは、お酒の旨い支那そばや「嚆矢」で教わった豆知識。日本には粋な言葉があるもんです。一般にお燗に向くと言われるお酒でなくても、吟醸も、しぼりたても、にごりも、おいしいお酒ならなんでもお燗できる。お燗してまずいお酒はろくなもんじゃないっすと、店主のしばちゃんは言います。
でも、燗付け初心者の我々はそんな繊細な論議未満。あちち、あ、付けすぎた、だの、今度はちょっとぬるかったなんて言いつつ、杯だけ進んでいい気分。
絶妙なお燗には、ちょっと修業がいるようです。
でも、しまい込みがちだった酒器たちをあれこれ遊べるのは嬉しいこと。これは福永さんの薪窯の初窯のお祝いにいただいたもの、こっちは青木さん。あちこちの個展で気に入って買ったものから、B品として作家さんの仕事場の隅に埋もれていたものまで、ひとつひとつ思い出があります。
最近、お酒飲みの間では、夏でもぬる燗の人も多いよう。でも、わたしには、やっぱりまだお燗は凍える寒さとセットのもの。
昔、吟醸酒などが流行りはじめ、若かったわたしや飲み仲間たちがあれこれうんちく傾け飲んでいると、お酒に強かった父が言いました。「うるさいなお前たち。酒って言うのはしばれた夜、『寒い寒い』とのれんをくぐると襟巻きしたおばさんが鍋でお燗して出してくれるもんなんだ」。
それが酒だ。そういう父の言い草をちょっとカッコよかったなと思い出し笑いしつつ、おやじくさく杯を運ぶわたしです。

右から、青木亮さん、村木雄児さん、丸山龍一さんのとっくり。青木さんのはどっしりとして好きだけど、ふたりで飲むには貫禄ありすぎて「なんだか、おやじが酒屋から量り売りで買ってくるやつみたいだね」。
お燗はとっくりだ、とわたしは思っているけれど、相棒は片口もけっこう好みます。
ほんとは素敵な錫の「酒タンポ」(おでん屋さんなんかでお燗してくれる取ってのついたやつ)も欲しいけれど。

デパ地下のデモンストレーションで酒造の人に「お燗したいんです」と言って、一押しだった一本義 の「伝心」。福井の一本義と言うお酒は前から割合好きな銘柄。あまりに涼やかなボトルだったので、お燗のイメージじゃなかったけれど、なるほど、ごくすっきり系なのでそのまま飲むよりお燗が美味しかったです。磨りガラスかなと思ったら、和紙を貼ったラベルでびっくり。きれいです。
いま、飲んでいるのは黒帯 。
三茶の山口利枝さんのお兄さんの店 でお燗してもらって美味しかったから。

最近お刺身をゴマ油とお塩で食べるのが、ちょっと好き。
カルパッチョ用に、ちゃんとオニオンスライスをしいたお刺身でした。
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