2007年 09月 08日
長井さんの茜色。 |
「朝ごはんの食卓」なら、やっぱりお椀は絶対欲しい。と、久しぶりに輪島の長井均さんに電話して、お椀の出品をお願いしました。去年、青山の「うつわ楓」さんでの個展で見て、惚れ込んだ「茜色」のお椀です。
長井さんには、もうずいぶん前、2年続けて漆のグループ展に参加していただいたあと、時折、展示会でお目にかかるぐらいになっていました。
もともとは分業で漆器が作られる輪島で下地職人の家に生まれ、自らも下地一筋でやってきた長井さん。でも、ある時期から持ち前のチャレンジ精神で上塗りも始め、下地の味わいを生かした独自の作品を発表して来ました。ピカピカの漆器が主流の輪島にあって、素朴でどこか荒削りな漆は、その純朴でちょっとユーモラスな人柄と相まって人の心を引き付け、長井さんは人気ものになりました。
久々に出かけた個展で「茜色のお椀」と出会って、PARTYにもお願いして心待ちにしていた3月、能登の地震が起きました。催しに参加していただいた時、訪ねた能登の高台の長井さんのお家が頭に浮かびました。大丈夫かな。直後の混乱が収まったころ、携帯に電話をしてみるとお家もご両親も無事だったものの、長井さんはちょうど「いま、屋根に上って様子を調べている」ところでした。
地震のときは「どうしたらいいか、わからないというのはこういうことか」と、思ったほどの衝撃だったとのことでした。自分は無事だったけれど、被害のあった知り合いも多くいてと、陽気な長井さんの深刻な声に、災害の大きさをあらためて思い知りました。
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でも、この初夏、お椀の出品をお願いした時の長井さんの声は、なじみ深い調子に戻っていました。ああ、よかった。
かくして茜色のお椀は無事にやって来ました。素敵な小さな角皿や箸置きも入っていました。
こっくりと深い赤が加わって「朝ごはん」の風景が、ひときわ温かくなりました。
by UTSUWA-PARTY
| 2007-09-08 19:17