馬野真吾さんのこと。 |
2019年最後の展示は、PARTYで、東京で最初の個展の馬野真吾さん。
そして、わたしにとって今年最高にドキドキの催しです。
馬野さんのうつわと出会ったのは、2015年の益子陶器市のときのこと。
うつわ店「もえぎ」のギャラリーで個展を開いていた馬野さんの作品は、土の風合いを残しつつカジュアルでシンプルでいまらしい表情で、「使いやすそう」とお皿を一枚いただいたものの、たまたま席を外していた馬野さんとは会えずじまい。
その後、つてをたどって連絡が取れたけれど「まだ、独立していないので常設用の納品はできないんです」とのことでした。
そうか、と落胆したものの、なぜか企画展なら参加してくれるということで、お願いしたのが2017年の「細長いうつわ、箱型のうつわ」という展示。そして、二度目が去年秋の「五寸皿展」。
その間、毎年の陶器市ではテントを訪ね、折々にその作品を見てきたけれど、あるときはあれ?と思うほど泥臭く、ときには、おっ、と目を見張るほどかっこよく、出会うたび想像を裏切る変貌でとまどわせる「うまちゃん」でした。
馬野さんが働いているのは「よしざわ窯」。いわずと知れたファンシーで可愛らしく、陶器市では朝早くから行列ができる人気の窯です。
広島出身の馬野さん。絵が好きで大学で美術を学び、さまざまなコースを体験したのち陶芸を先行。卒業後、友だちがいた栃木を時折尋ねるうち、作陶する環境の良さに惹かれて益子に来て5年。
師匠となった若林健吾先生も、洋風でおしゃれなうつわを作られる方だったから、出会った頃の馬野さんのうつわもちょっと洋で、ちょっといま風のテイストだったのだと思います。
でも、その一方で自分のうつわを目指し、つねに試行錯誤をしてきた馬野さん。
自分で配合した土、自分で調合した釉、自分なりに考えたかたち。思うにまかせず、失敗しては、また新たに挑む日々。
あきらかにダメだったものはもちろん、傍目には「良かったのに」と思うかたちも色も惜しげなく捨てて挑み続けるうちに、馬野さんのうつわは、師匠とも働く窯とも遠く離れ、出会ったころとだいぶ違うものになりました。
作品と出会って4年、個展を口説いて「やってみたい」と言ってもらって2年。
つまるところ、今回の個展はわたしが最初にいいなと思い、お客さまに紹介したいと思った馬野さんとはずいぶん異なるものになりそうだけど、会期が近づき、サンプルが届いてもなお搬入までドキドキさせてくれる、いまのうまちゃんの方がずっと面白くて醍醐味がある。と思います。
極端に口数が少なくて、いつもお地蔵さんみたいににこにこしてるけど、本当は熱くて、ちょっと頑固で、我が道をぐんぐんと行く馬野真吾さん。その初めての、渾身の個展にぜひぜひいらしてくださいね。
樫、檜、楢、わら灰などの木灰に長石などを混ぜながら、納得のいく色を、質感を止まることなく模索する馬野さん。知る限りのここ数年でも、その振れ幅は大きく予測不能に思えたけれど、初めての個展に向けていい感じに落ち着いて来たように思えます。
「色の種類は10種類近くになると思います。」
個展直前に来た意気揚々としたメッセージから、馬野さんの釉への並々ならぬこだわりが伝わります。