石川隆児さん。 |
今回が陶芸家として企画展デビューとなった石川隆児さんは、参加してくださった11人の中で、だんとつ年少の25才。だけど、その作品の達者なことは周囲のベテランたちを呆れさせるほどです。
大学の造形芸術部に進み、やきものに目覚めた彼は、毎朝、暗いうちに電車に乗って1時間半かかる学校に行き、工房を独り占めして作品づくりに没頭したそうです。暇さえあれば好きな焼きものを見て回り、長い長い時間、熱心に見ているものだから、親子ほど年の違うギャラリーオーナーともすっかり仲良くなって、知りたいことがたくさんで質問攻めにするから作り手とも親しくなり、学校を卒業するときには、大好きだった松山の石田誠さんの工房に置いてもらえることになりました。
が、そのとき、もうひとつ舞い込んだのが、亡くなった青木亮さんの奥さん、祥子さんからの申し出。
「亮の仕事場を使ってくれませんか?」
そうして石田さんのもとへ8ヶ月行ったのち、隆ちゃんは藤野の青木さんの仕事場に住まうことになります。
いろいろな出会いがもたらしたいまの境遇を、彼は信じられない幸運のように言うけれど、すべては彼の一途な思いが導いたこと。もしかしたら、いつもひたむきな「若いもん」を放っておけなかった青木さんが、隆ちゃんを呼んだのかも知れません。
隆ちゃんは、青木さんとは面識がありません。
でも、日々、青木さんの作品に囲まれ、そのお弟子さんであり、また好きな作り手である長谷川さんの手伝いをすることで自ずとその影響を受けます。また周囲を取りまく先輩たちからも、さまざまな刺激を受けます。その上、見たいこと、知りたいことがあれば、隆ちゃんはどこへでも身軽に飛んで行きます。
そうしてたくさんのことを吸収しながら、いっぱい寄り道しても迷っても、隆ちゃんにはまだまだ眩しいぐらいいっぱい時間があるんだな。…そう思うと、ちょっぴり羨ましくなったりします。
粉引き、灰釉、アメ釉、南蛮。
好きな酒器でデビューできて嬉しいという彼の作品からは、ほんとに「嬉しい」が伝わってきます。
「あまり作ったことない」板皿は、今回、お酒の肴のために作ってくれたもの。南蛮の薪窯は36時間寝ずにひとりで焚きました。
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