長谷川奈津さん。 |

「やっぱりお酒は徳利で飲みたいと思いました。」
去年、酒器展が終わった後、長谷川奈津さんがメールをくれました。
「いい徳利を作れるよう、まずはやってみます」。
田宮さんとのふたり展からいつしか15年ほどが経って、すっかりキャリアある作家さんになったのにいつまでも楚々としたイメージの変わらないなっちゃん。
でも、お酒はイケる口です。
最近、彼女は長く一緒に暮らした愛犬を亡くしました。年とって足腰が立たなくなって、最後は寝たきりだったけれど、大好きななっちゃんに大切に介護されしあわせな最後だったと思います。
藤野の古い一軒家に工房を持つ彼女には、ほかにももう一匹の犬と二匹の猫がいます。みんな一緒に年取ってそれぞれ手がかかるようになり、日々、かいがいしく面倒を見る彼女のことを周囲は心配したりもするけれど、なっちゃんは苦にする様子も見せず、粗相に苛立つこともなく、相棒がいなくなって元気のない犬の「ロク」が歩きたがらなくなっても根気よく散歩につきあい、クルマに乗れなくなったからと板きれをみつけて橋にしてみたり、そんな手間ひまを愛おしんでいるようにも思えます。
考えてみれば、そういう彼女の心の有りようが、作品の、やさしくたおやか、それでいてどこか凛として強い、そんな得難い魅力に現れているのかもしれません。
なっちゃんの食卓に並ぶのは、やはり人柄同様、慎ましやかで気取らず、素材を大切にきちんと作られた、心にもからだにもやさしいお料理です。
ときおり、晩酌の伴に昔レシピを訊かれた酒肴を作ってくれていたりして、ちょっと嬉しく思います。なかなか一緒に酌み交わすことはままならないけど、どことなく気心通じるお酒飲み同士であれたらいいな、と思ったりしています。
上の写真が、今回出品してくれた徳利のいくつか。
こだわりがある分、苦労したようで、初日の朝、手持ちの搬入になりました。

スッとした佇まいの片口は、長谷川奈津さんならではのもの。

色もかたちもやさしいぐい吞みたち。
今回、粉引き、りんご灰、松灰、あめ釉など、さまざまな色味が…。
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