田宮亜紀さん。 |
酒器展は、基本的に「お酒飲み」の作り手だけに頼もうと思ってました。酒飲みの気持がわかるから。でも、去年の初夏、田宮亜紀さんの個展でとっくりに釘付け。あえなく、そのオキテは崩れ去りました。
田宮さんは下戸です。
彼女と出会ったのはもう15~6年前。
まだ、作品を持ってお店をまわっていた頃。訪ねたお店のひとつの「桃居」さんが「PARTYさんに合いそうな人がいるから」と紹介してくれたのです。
間もなく作品でパンパンなハッチバックを縄でしばったクルマで現れた田宮さんは、唖然とするわたしを尻目に嬉しそうに荷を下ろし、荒削りで力のこもった焼き締めのうつわを見せてくれました。
聞けば勤めていた出版会社を退職し、退職金で窯を買い、益子に住んでいるとのこと。しばらくして窯を訪ねてみると、農家だったという平屋を借り大きな農機具置き場に大きな窯を置き、ひとり暮らしている彼女がいました。家はむやみに広くて、誰か入ってきてても気づかなそう。
「ねえ、これって怖くない?」「最初はさすがにわたしも怖かったです」。
なんてタフで肝の座った人だろう。
それから、まだ青木亮さんのお弟子さんだった長谷川奈津さんと2度ほどふたり展をやってもらい、以来、長いおつきあいになるけれど、田宮さんのその印象はそのときとまったく変わりません。
一貫して焼き締めに取り組み、ときに薪窯を焚き、しばしば小柄なからだがはいるほどのツボに挑み、つねに前のめりにたくさんのモノを作り続け、しかもいつもたのしげ。あの華奢な彼女のどこにそんな不屈のパワーが潜んでるのだろう。
そんな豪快な彼女がまったくの下戸なんて信じられない。
信じられないけど、きっと彼女には飲まずとも豪放磊落な酒飲み的気風が備わっているのだろう。
と、彼女の酒器をみて思うのです。
去年、村木さんの窯焚きに伺ったときも自分の薪窯の経験をふまえ、てきぱきと働く田宮さんが印象的でした。ちょっと職人的でもあり、かっこよかった。いつまでもそういう亜紀ちゃんでいてください。
可愛い豆皿豆鉢も作ってくれました。
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