信州の旅。 |
日曜から火曜日まで、母と信州に行って来ました。
店の上に暮らす母だけど、ビンボーヒマナシの娘はいつも目の前を右往左往。ちっとも話し相手にもなりゃしないから、時折の旅行がゆっくり過ごせるひとときです。
出張の旅行は、夜行バス駆使、ちょっとした距離なら日帰りの弾丸ツアー(?)だけれども、80才過ぎた母と行くときは、少しゆったり。母の好きなお買い物タイムやお茶の時間をたっぷり取って、宿にもに早めに着くことにしています。
今回の最初の目的地は野尻湖。
亡くなった父が山好きで、子供の頃からよく信州には連れて行かれたものですが、中でも野尻湖の旅は母もわたしも印象深く、父亡き後も一度二人で訪ねたことがありました。でも、それももう10数年も前のこと。ほんとに久々の北信州です。
初日は関越道から上信越道に入って、休憩挟んで3時間半で信濃町IC到着。
すぐの「道の駅しなの」でおそばのお昼。ほんとは、も少しこだわりたかったけれど、ここでうろうろ迷うのも時間がもったいないし、ここも見晴らし良いし、手打ちのおそばはなかなかのものとネットの口コミに書いてあったので…。
相棒や仲間と出かけるときは行き当たりばったり、ハズシてもまた楽しだけれど、母と出かけるときは無用に迷って疲れさせたり、がっかりさせたりしないよう、綿密な下調べ。まあ、下調べ好きは父似でもあるんですけど。
コスモス園は、いまが見頃。ピンク、黄、オレンジ、白、色とりどりのコスモスに、さまざまな種類のダリア園。
眼下には野尻湖一望で、日射しは強いけど吹く風は涼しく心地よい。「暑いけど、やっぱ東京とは違うよね」。
父の努力の甲斐もなく、山登りにハマらなかった母とわたしを諦めて、あるときからもっぱら父は山行の途中で見つけた、小洒落たリゾートなどに連れて行ってくれるようになりました。
野尻湖もそのひとつ。そして、そのときもお茶しに寄ったのが赤倉観光ホテルだったのですが、眼下に広がるパノラマの風景と吹き渡る風は素晴らしかったものの、スキーシーズンオフのホテルは古ぼけて閑散とした印象でした。
それが「リニューアルしたのよ」と、教えてくれたのは弥生さん。じつは,偶然にも数週間前、弥生さん一家は夏休みでほぼ同じコースに旅していたのでした。それで、直前情報をたくさん得られたのはラッキー!
本当に、ホテルは赤い屋根の外観やレトロなロビーのイメージはそのままながら、シックなカフェや庭の芝生の所々にナチュラルな花のガーデンもできて、寂びれた印象一掃。程よい賑わいを見せていました。おいしいケーキをいただいて一休み。
この日泊まった「ホテル エルボスコ」は、以前は野尻湖プリンスホテル。
名前も経営も変わったけれど、野尻湖の奥深く延々と続くホテルまでの険しい道も、湖畔にぽつりと佇む建物も、お部屋の窓いっぱいに広がる木立と湖の風景も、スタッフの感じの良さも変わることなくホッとします。
ゲストにゆっくり過ごしてもらうため、ロビーの書斎におかれたお部屋に持ち込み自由の本たちも嬉しいけれど、早めに着いても温泉がないためひなびた妙高温泉まで送迎してもらったり、翌日は次の目的地となるとなかなか読書に浸るほどのゆとりがないのがちょっと悲しい。
こんな木立を見ながら日がな一日読書なんて、いちばん贅沢。やっぱり、こういうところは連泊だな〜、とつくづく。
さて、翌日は、再び信越道で一路上田方面へ。
今年は暑かったから「なんだかかき氷屋さんみたいになっちゃって」と笑う奥さんの真紀子さん。
窓からの風景。
なんて妙な見栄とテレを母をダシに投げ捨てて、地図を見ながら目指します。
ヴィラデストの位置は、海野宿のほとんど真上。かなり急斜面の道をひたすらぐんぐん走ります。だいぶ登って「道、間違ってないかな」と思い始めるころ「ヴィラデストワイナリー」の目印が。それに沿って辿り着くと。お〜〜。駐車場がいっぱい!
レストラン&ショップのドアを開くと、また、お〜〜。人がいっぱい。
ここまでの道、人もクルマもほとんどいなかったのに。夏休みも終わった平日なのに。聞きしに勝る人気のすごさ。レストランの入り口のカウンターには玉村さんもいらして、予約の有無を尋ねつつ、つめかけるお客さんをさばいています。ショップにはワインを始め、玉村さんのイラストグッズがいっぱいで飛ぶように売れてます。う〜ん、でもほんとに絵はお上手だし、グッズもお洒落。
プレートランチ2000円。ちょっと高い。でも、もうお昼まわってるしせっかくだし、玉村さんに伺うと「もう、まもなくご案内できると思います」ということで、ここでランチ。
自家製のパンに、ズッキーニのスープに、ボリュームたっぷりのプレート。どれも美味しかったです。橙さんでかき氷食べちゃったし、さずがに食べきれなかったパンは、スタッフが声をかけて包んでくれました。感じいい。
外に出ると高台から望む風景は素晴らしく、手入れされたガーデンは美しく、来てみる価値はありました。もちろん、母は「聞いてはいたけど、ほんとに来れるなんて」と、大喜び。
そうか、やっぱ来てみたいところの王道なのね。でも、正直、また来てみたいと思っちゃいました。
そして、この日、最後の見学ポイントは「無言館 」。戦争に行って帰らなかった戦没画学生の作品を納めた美術館です。弥生さんに勧められた場所だけれど、母は知っていて「来てみたかったの」ということで。木立の中の美術館の建物は、まるで教会のように慎ましやかで神聖な佇まい。
ひとつひとつの作品には略歴とともに亡くなった場所やそのときの年齢が添えられて、ほとんどが20代から30代初めということに、思わず胸が詰まります。描くことが好きで好きでたまらない、そんな思いが伝わる力のこもった絵の前で、改めて戦争の無惨を思わされました。
夕食は、やっぱり地の食材を生かしたものばかり。お野菜たっぷり、ひとつひとつが丁寧に作られて、さっぱりと味付けで美味しかった。藤塚さんのお皿や荒川さんのグラスも登場の、うつわ使いもたのしく、細やかな先付けに始まり、ヒメマス、信州牛のお刺身、千曲川の鮎、などなど細やかなお料理が続いたあとにメインがたっぷりのサラダと大きなグラタン皿(というより鍋)いっぱいのズッキーニとトマトのグラタンという展開にも嬉しい驚き。でも、さすがに食べきれずギブアップ。〆の美味しい鮎ごはんが一口しか食べられなかったのが心残り。
旅館のお食事はいつも量が問題だと思う。だって、もったいないもん。
最後の日は、当然ながら道の駅はしごで信州野菜の買い出し。見晴らしのいい浅間サンラインを通って一路軽井沢へ。星野リゾートが新しく作ったという(これも弥生さん情報)「ハルニレテラス 」散策でお昼ごはん。
最後に軽井沢高原文庫と深沢紅子野の花美術館を見学し、早めに帰途に着きました。
久しぶりの信州の旅。心を潤す緑の風景。美味しい里の幸。心地よい温泉。訪ねきれない名所旧跡、美術館の数々。あらためてその魅力と奥行きを知った旅でした。
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